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ちょこっと雑談

2024.7.31

「言の葉の庭」のキーソングは3番手の別作品。

 
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雨に願う心情から、間接的に伝える和歌の魅力を考える

「言の葉の庭」の劇中歌と短歌の醍醐味をちょこっと文にしました。最後にこの映画も軽く紹介しています。
3番の歌「あしびきの〜」から始まる歌は、柿本人麻呂(であるとされる)です。この人は百人一首の中でもかなりの初期に登場するのもあり資料が残されていず、早いうちから「伝説の人」扱いになったのですが、雨をテーマにした別の歌が現代の作品に使われているのはご存知ですか?
新海誠監督作品(2013年5月公開)のアニメ映画、「言の葉の庭」。主人公の男の子の恋した女性は職業柄、和歌に精通した人。初めてあった時に、女性は男の子にある歌を呟くのです。
それがこちら。


「鳴(な)る神(かみ)の、少し響(とよ)みて、さし曇り、雨も降らぬか、君を留(とど)めむ」


訳:雷が鳴って、空はくもり、雨でも降らないかしら。あなたを引きとめておきたいから。

自分の恋を自然に託し、微かな望みを雨に願う。一緒にいたいという気持ちを言葉に出さない「匂わせ」の手法。
変化球大好きな、極めて日本的な表現ですが、その言うに言えない想いの臆病な部分といじらしさにぐっとくる歌と言えるでしょう。
好きとは言葉に出さない方法で気持ちを伝えるのが和歌の醍醐味です。

「いや、まどろっこしいな。直球どストレートでいいでしょ」っていう意見ももちろんOK♪
愛を伝えることは必ずしも短歌のように間接的でないことの方がいいことだってたくさんあります。しかし、こと和歌に関しては、文学的にそのまどろっこしさに価値を置いているのです。

そもそも、それができたら苦労しない!…って人たちが作ったのが和歌なんです。 往々にして気になる人の前ではうまく伝えられないもの。どう伝えようかと悩み、表現してきたからこそ、永い時を超えているのです。
皆さんにもこんな経験がありませんか?勉強や習い事、恋愛。うまくいかなかったり、悔しかったことほど鮮明に覚えていたりすること。あれです。
なんとか伝えようと必死こいて(笑)生み出された数々の言葉達。それが1000年先の私たちに静かに問いかけてくるのです。
そして1000年前の人と悩みを共感できるのも、素直に直接伝えられない分だけ長く鈍く残り続けていくことができるのです。
直接的か間接的かは比べる世界線が違うんですね、うん。
厚焼き卵の塩派か砂糖派、犬と猫どっちが尊いとかと同じです。どちらにも良さがある。比べるものじゃないじゃないですか。それと同じですね。


ちなみに、この映画の舞台は梅雨の時期の新宿御苑です。
非常に大事なのは梅雨の時期であると言うこと。大事な部分なので2回言います。なぜ大事かは映画見てください。
キーソングも雨にまつわるものとあり、その情景描写に惹かれる映画となっています。滴る雫の一つひとつを丁寧に捉え、本物よりも情緒的な光の表現方法に浸ることができます。

梅雨を好きになるきっかけの映画です。
興味持たれましたら、ぜひこの世界観に浸って見てください。雨も今までとは少し違ったように見えるかもしれません。

※参考:「言の葉の庭」監督:新海誠

※アイキャッチ画像の背景は映画のHPから引用しております。

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